Fビザのタックスリターン (米国留学生)
Fビザ保有者としてアメリカに滞在する留学生から、アメリカのタックスリターンについて、多くの質問が寄せられます。
米国内国歳入庁【Internal Revenue Service、略称:IRS】や大学のWebサイトに、Fビザ保有者のタックスリターンについて、様々な情報が掲載されていますが、正確に申告できるか不安に感じることが多いようです。
Fビザ保有者のタックスリターンには、特別なルールが適用されますので、アメリカ人の友人からのアドバイスに従って申告すると、間違ったタックスリターンを提出してしまうリスクがあります。
この記事では、Fビザを保有している留学生のタックスリターンについて解説します。ご参考いただけたら幸いです。
なお、以下「タックスリターン」は「確定申告」称しますので、予めご了承ください。
Fビザ保有者として留学している場合、主に該当する申告書は以下のとおりです。
Form 8843
Form 8843とは、Fビザ保持者が、連邦税法上の「Exempt Individual」という特別なルールに該当することを、IRSに報告するために提出する申告書です。
Form 1040NR (or Form 1040)
Form 1040NRとは、米国連邦非居住者用の確定申告書 【US Nonresident Alien Tax Return】です。留学生として、アメリカで申告対象となる所得を得ている場合に提出します。
Fビザ保有者として、5暦年【5 Calendar Year】以上、米国に留学・滞在している場合、Form 1040NRではなく、Form 1040【米国連邦居住者用の確定申告書】を申告する場合がございます。
State Income Tax Return
State Income Tax Returnとは、居住している州の確定申告書です。連邦の税法と各州の税法は異なる場合がありますので、連邦では非課税であっても、州で課税される可能性があります。
上記の全てに該当する方もいれば、1つのみに該当する場合もあります。上記についてご説明する前に、Fビザを保有している留学生の実質的滞在日数テスト【Substantial Presence Test】と特別なルールである「Exempt Individual」についてご説明いたします。
米国にFビザとして留学している学生は、米国連邦税法上、「Exempt Individual」という特別なルールが適用されますので、Substantial Presence Testで使われる米国滞在日数が5暦年間【5 Calendar Year】カウントされません。
Fビザ保有者のSubstantial Presence Testの例え
2019年9月1日にAさんという日本人留学生がFlorida UniversityにFビザで入学し、2023年に卒業し、日本に帰国しました。確定申告の該当年度は2023年度とします。
Aさんの米国滞在日数は以下の通りです。
2019年: 121日
2020年: 330日
2021年: 345日
2022年: 338日
2023年: 200日
一見すると、実質的滞在テストの基準を満たしているように見えますが、AさんはFビザの留学生であるため、「Exempt Individual」が適用されます。そのため、5暦年間の米国滞在日数はカウントされません。したがって、米国滞在日数が以下の通りとなります。
2019年: 121日→ 0日
2020年: 330日→ 0日
2021年: 345日→ 0日
2022年: 338日→ 0日
2023年: 200日→ 0日
よって、Aさんは、実質的滞在テスト#1およびテスト#2の条件を満たしていないため、2023年度は、米国非居住者となります。
Aさんが、卒業後に日本に帰国せず、2024年にも米国に滞在する場合、5暦年を超えますので、2024年度からは、「Exempt Individual」が適用されません。
そのため、2024年1月1日からSubstantial Presence Testで使われる米国滞在日数がカウントされ、米国居住者として確定申告を行う可能性があります。
Form 8843とは、Fビザを保持する学生が”Exempt Individual”のルールに該当することをIRSに報告するための税務書類です。
Form 8843をご確認したい方は、こちらをご覧ください。【Form 8843】
提出義務
- ”Exempt Individual”が該当する場合、所得の有無に関係なく、提出する必要があります。
- 米国納税者番号 (ITIN or SSN)がなくても、提出できます。
提出方法
- もしForm 8843のみを申告する場合は、一般的に郵送での提出です。
- もしForm 1040NRと一緒に申請する場合は、申告書の内容によっては電子申請も可能です。
郵送先
- Form 8843の郵送先は、Form 8843が掲載しているIRSの公式ウェブサイトの"Current Revision"セクション、 "Form 8843"へ行き、"General Instructions"の "When and Where To File"を確認してください。(おおよそ3ページ目に位置しています。)
- 郵送先は変更されることがあるため、提出前に必ず確認してください。
提出期日
- Form 8843のみの提出の場合、申告日は通常6月15日です。
- Form 1040NRとForm 8843を併せて提出する場合、申告日は、通常4月15日です。ただし、延長申請を行うことで、6カ月の延長が認められます。
Form 1040NRは米国非居住者向けの確定申告書です。米国居住者用のForm 1040と似ていますが、異なりますのでご注意ください。間違ってForm 1040を申告してしまうと、修正申告が必要となります。
Form 1040NRを確認したい方は、こちらをご覧ください。【Form 1040-NR】
提出義務
- 留学生でありながら、キャンパス内での就労許可を得て給与を受け取ったり、OPTとして企業から給与を受け取っている場合、Form 1040NRの申告が必要です。
提出方法
- Form 1040NRは、電子申請での申告が一般的ですが、申告書の内容によっては郵送で提出しなければならない場合があります。
提出期日
- Form 1040NRの申告日は、通常4月15日です。延長申請を行うことで、6カ月の延長が認められます。
よくある質問
日本からの奨学金に関して
日本から奨学金が受け取っている場合、以下の条件を満たすと、その奨学金は非課税となります。
注意点
- 日本からの奨学金を賃貸費・寮費、旅行、医療費、交通費などに使用した場合、その分は非課税とはなりません。
- この非課税の適用は租税条約に基づくものです。そのため、確定申告書に奨学金が非課税であることを報告するためにForm 1040NRの申告が必要となります。
両親からの仕送りについて
- 日本にいる両親からの仕送りは課税対象外です。この仕送りをForm 1040NRに申告する必要もありません。ただし、両親から仕送りを受け取った後、両親に感謝の気持ちを伝える必要があります。
州のタックスリターンについて、いくつかの注意点を紹介します。州のタックスリターンに関する疑問や不安がある方は、日米の税務に詳しい専門家に相談することをお勧めいたします。
所得税のない州
所得税のない州は以下の通りです。
- ネバダ州
- アラスカ州
- フロリダ州
- テネシー州
- テキサス州
- ワシントン州
- ワイオミング州
- サウスダコタ州
- ニューハンプシャー州
この州に滞在している留学生は、州の確定申告について心配する必要はありません。
州では居住者?
連邦では「Exempt Individual」として米国滞在日数がカウントされない特別なルールがありますが、州には「Exempt Individual」という特別なルールはありません。
多くの州では、一暦年間を通して居住すると、州税法上の居住者【Full-Year Resident】となりますので、全ての所得が、州確定申告にて課税対象となります。
年の途中で、所得税のある州に移住した場合、【Part-Year Resident】として申告する必要がありますので、一般的にその州に居住が始まった日から、全ての所得が課税対象となります。
州確定申告の必要性
所得税がある州にて給与所得を得ている場合、基本的には州の確定申告書の提出が必要です。しかし、所得が一定の額以下である場合、申告義務がない州も存在します。
例えば、マサチューセッツ州では、居住者の総所得が$8,000以下の場合、州確定申告の提出は必須ではありません。(参考)
しかし、申告を行わないと、還付金を受け取ることができないだけでなく、追加の税金が発生した場合、遅延罰金などを含む通知を受け取る可能性があります。
したがって、所得税が課税される州で給与所得を得ている方は、州の確定申告書の提出を強く推奨します。
日米租税条約は州にも適用するか?
各州の確定申告において、日米租税条約の適用は異なります。その結果、連邦レベルで非課税とされた所得が、州レベルで課税されることが考えられます。
例えば、マサチューセッツ州確定申告では、日米租税条約を認めているため、州の確定申告において日本からの奨学金は非課税となります。一方、カリフォルニア州確定申告では、日米租税条約を認めていませんので、奨学金が課税対象となります。
提出期日
ほとんどの州確定申告は連邦確定申告と同じく通常4月15日となります。もし間に合わない場合は、延長申請手続きを行うことで、6カ月延長が認められます。