FinCEN BOI Reportingについて

Published On: 11/21/2024By

2024年1月1日から、企業透明化法 (Corporate Transparency Act)により、アメリカでビジネスを展開している米国内法人や米国外法人に対して、実質的所有者報告書 (Beneficial Ownership Information Reporting、以下BOI Reporting) を米国金融犯罪取締ネットワーク (Financial Crimes Enforcement Network、以下FinCEN) に報告することが義務付けられました。

BOI Reportingの目的は、アメリカで展開している会社と、その会社の受益者を把握し、シェルカンパニーを利用した資金洗浄や、会社の構造を不正に利用し、利益を隠蔽することを防ぐためです。

この報告書は情報開示書ですので、報告することにより税金が発生することはありませんが、報告漏れである場合や、期限内に報告できなかった場合、厳しい罰則と罰金が科せられる可能性があるため注意が必要です。

すでにアメリカで会社を経営されている方や、これからアメリカで会社の設立を計画されている方も、このBOI Reportingに該当する可能性が高いので、報告対象の条件や、期限を把握しておくことで未報告による罰則を避けることができますので、参考になれば幸いです。

注意点

このように罰則のある報告義務が新しく成立されると、FinCENやIRSを装った架空の手紙やメール詐欺が横行します。もしFinCENやIRSからBOI Reportingについて通知書を受け取りましたら、必ず専門家にご相談ください。

BOI Reportingの対象となる事業形態

BOI Reportingの対象となる会社は、基本的に州政府機関 (Secretary of Stateなど) に事業登記している小規模な会社が対象となります。BOI Reportingの対象となる代表的な事業形態は以下のとおりです。

  • Partnership

  • S-Corporation
  • C-Corporation
  • Limited Liability Company (LLC)

ポイント

「州政府機関に事業登録している」とは、会社を設立する場合や、事業展開する際に、州務長官(Secretary of State)に定款 (Article of IncorporationArticle of Organization) などの申請書類を提出していることです。

例えば、フロリダ州で事業展開をしている外国法人である場合、フロリダ州のDivision of Corporationsに「Application for Authorization to Transact Business」を申請しますので、その法人は、州政府機関に事業登録をしていることになります。

BOI Reportingの報告期限

BOI Reportingの報告期限は、対象となる会社が州政府に登記された年度により異なります。それぞれの報告期限は次のとおりです。

2024年1月1日以前に登記された会社

BOI Reportingの対象となる会社が2024年1月1日以前に州政府へ登記されている場合、BOI Reportingの報告期限は、 2025年1月1までです。

2024年度中に登記された会社

BOI Reportingの対象となる会社が2024年度中 (2024年1月1日から2024年12月31日まで) に州政府へ登記されている場合、BOI Reportingの報告期限は、登記した日から90日以内です。

2025年1月1日以降に登記された会社

BOI Reportingの対象となる会社が2025年1月1日以降に州政府へ登記されてた場合、BOI Reporting報告期限は、登記した日から30日以内です。

未報告による罰金について

BOI Reportingを故意に怠ったり、虚偽の報告を行った場合、民事罰と刑事罰が科される可能性があります。どちらか一方の罰則に科せられる場合もあれば、両方の罰則に科せられる場合もあるため、注意が必要です。

民事罰 (Civil Penalties)

民事罰に科せられた場合、報告期限を過ぎた日から1日ごとに最高500ドルの罰金が科せられます。この罰金額は、インフレ調整されますので、現時点で1日ごとに最高は591ドルとなっています。

刑事罰 (Criminal Penalties)

刑事罰に科せられた場合、以下の罰則が科せられます。

  • 最高2年の禁固刑
  • 最高10,000ドルの罰金

Q.

BOI Reportingの報告義務を知らず、期限が過ぎてしまいました。どうしたらいいですか?

A.

BOI Reportingの報告義務を知らず、未報告である場合、今すぐBOI Reportingを行う準備をしましょう。知らなかった事実を証明することができれば、刑事罰に科せられる可能性は低いですが、民事罰に科せられる可能性があります。

BOI Reporting - 必須情報

BOI Reportingの対象となる会社は、大きく3つの情報を報告する必要があります。

会社の基本情報 (Reporting Company)

会社の基本情報とは、州政府に登記されている会社の基本情報となります。

  • 法人名

  • 連邦雇用主証明番号 (EIN)
  • 登記した州

  • 米国での住所*

*米国住所が必須となります。

会社設立申請者 (Company Applicant)

会社設立申請者とは、会社を登記するために州政府に会社設立書類を提出した者、もしくは法人を登記する手続き業務の責任者のことです。もし、会社が2024年1月1日以前に登記されている場合、この項目を記入する必要はありません。

  • 氏名

  • 生年月日
  • 住所
  • 写真付きの身分証明書

受益所有者 (Beneficial Owner)

受益所有者とは、会社の責任者 (CEOやCFOなど)、役務を執行する者、会社の所有権を直接、もしくは間接的に25%以上保有している者のことです。複数人いる場合は、それぞれの情報を記載する必要があります。

  • 氏名

  • 生年月日
  • 住所
  • 写真付きの身分証明書

報告免除となる会社

BOI Reportingの報告免除となる会社は、23項目あります。誤解を避けるため、英語で表記させていただきますので、予めご了承くださいませ。

  • 1
    Securities Reporting Issuer
  • 2
    Governmental Authority
  • 3
    Bank
  • 4
    Credit Union
  • 5
    Depository Institution Holding Company
  • 6
    Money Services Business
  • 7
    Broker or Dealer in Securities
  • 8
    Securities Exchange or Clearing Agency
  • 9

    Other Exchange Act Registered Entity

  • 10
    Investment Company or Investment Adviser
  • 11

    Venture Capital Fund Adviser

  • 12
    Insurance Company
  • 13
    State-Licensed Insurance Producer
  • 14
    Commodity Exchange Act Registered Entity
  • 15
    Accounting Firm
  • 16
    Financial Market Utility
  • 17

    Pooled Investment Vehicle

  • 18
    Tax-Exempt Entity
  • 19

    Entity Assisting a Tax-Exempt Entity

  • 20
    Large Operating Company
  • 21
    Subsidiary of Certain Exempt Entities
  • 22

    Inactive Entity

BOI Reportingの免除項目に該当するビジネスであると思われる場合、以下に提示しましたサイトに行き、PDFファイルの11ページ目以降にある、各免除項目のチェックリストをご確認いただき、報告免除の条件を満たしているかを必ずご確認ください。

参照:BOI Small Compliance Guide v1.1

例えば、15番目の「Accounting Firm」についてですが、2002年度に制定されたSarbanes-Oxley Act第102条に基づき登録された公認会計事務所であることが条件となっています。

Large Operating Companyについて

BOI Reporting免除項目の中で、該当する可能性が高いのが、「Large Operating Company」です。Large Operating Companyとは、その会社が以下の条件を全て満たしている"Large Operating Company"とみなされますので、BOI Reportingの報告義務が免除されます。

  • 20人以上の従業員をフルタイムで雇用している

  • 米国内に事業活動を行う場所を有している

  • 前年度の法人確定申告の売上額 (Gross Receipts or Sales)が500万ドル ($5,000,000)を超えている。(もし、米国外の売上が含まれている場合は、その分は差し引く)

この記事では、複雑な米国の税法やルールをなるべく分かりやすくご理解いただく目的でお伝えしています。納税者の状況により、異なるケースもございますので、予めご了承ください。

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