低・中所得者向けの貯蓄者タックスクレジット【Saver’s Credit】

Published On: 12/03/2023By

アメリカのタックスリターンにおける貯蓄者タックスクレジット【Saver's Credit】は、対象となる納税者が、米国リタイアメント口座に拠出を行うことにより、税控除(タックスクレジット)が付与されます。このタックスクレジットは、税額を直接減額するので、節税において注目すべきタックスクレジットの1つです。

特に、Traditional IRAや401(k)プランに拠出を行うことにより、拠出額が課税対象となる所得から控除されるだけでなく、さらにタックスクレジットが付与される可能性がありますので、いわば「一石二鳥」です。

この記事では、貯蓄者タックスクレジットについて解説していきます。

貯蓄者タックスクレジットとは?

貯蓄者タックスクレジット【Saver's Credit】とは、納税者が対象となる米国リタイアメント口座に拠出を行うことで、拠出額の一部がタックスリターンを申請するときに税控除(タックスクレジット)として付与されることです。

クレジット額は、納税者の調整後総所得額【Adjusted Gross Income】により、50%、20%、もしくは10%が決定され、拠出額に決定されたパーセントをかけることにより、クレジット額が算出されます。

貯蓄者タックスクレジットの上限額は以下のとおりです。

  • 夫婦合算以外:1,000ドル
  • 夫婦合算のみ:2,000ドル

貯蓄者タックスクレジットの計算における拠出額の上限は2,000ドルです。例えば、納税者がTraditional IRA口座に6,000ドルの拠出を行っても、クレジット額の計算に適用される拠出額は2,000ドルまでとなります。

貯蓄者タックスクレジットの対象者

貯蓄者クレジットの対象者になるためには、以下の条件を全て満たす必要があります。

  • 学生ではない

  • 18歳以上である

  • 他の申告書で扶養家族として申告されていない

よくある質問

Q. 米国非居住者は貯蓄者タックスクレジット【Saver's Credit】を使うことができますか?

A. 米国非居住者も貯蓄者タックスクレジットを使うことができます。

対象となるリタイアメント口座

貯蓄者タックスクレジットの対象となるリタイアメント口座の種類は、以下のとおりです。

  • Traditional IRA
  • Roth IRA

  • 401(k)
  • 403(b)
  • 457(b)
  • SEP
  • SIMPLE
  • TSP

注意点

ロールオーバー(Rollover)による拠出は適用されませんので、ご注意ください。

納税者の調整後総所得額とパーセント

貯蓄者タックスクレジットが付与されるためには、納税者の調整後総所得額【Adjusted Gross Income】が以下の規定額のいずれかに当てはまる必要があります。また、調整後総所得額により拠出額にかけるパーセント(50%、20%、もしくは10%)が決定されます。

もし、納税者の調整後総所得額が「拠出額の10%」を上回る場合、貯蓄者タックスクレジットは付与されません。

2023年度の調整後総所得額

2024年度の調整後総所得額

調整後総所得とは、納税者の年間総所得から特定の控除を引いた額のことで、Form 1040のライン11に位置します。

貯蓄者クレジットの計算方法

貯蓄者タックスクレジットの計算方法を例えを交えて、ご紹介いたします。

例え #1

貯蓄者タックスクレジットの対象者であるAさんが、2023年にTraditional IRA口座へ3,000ドルの拠出を行いました。Aさんは独身で、2023年度の調整後総所得が23,750ドル(拠出額の20%)である場合、貯蓄者タックスクレジット額の計算方法は以下のとおりです。

Aさん

適用となる拠出額:2,000ドル

パーセント:20%

クレジット額:$400【2,000ドル x 20%】

Aさんは、Traditional IRA口座へ3,000ドルの拠出を行いましたが、貯蓄者タックスクレジットの計算で適用される拠出額は2,000ドルまでとなります。

例え #2

貯蓄者タックスクレジットの対象者であるAさんとBさんは、夫婦で共働きをしており、2023年度のタックスリターンでは夫婦合算として申告します。

AさんとBさんは、2023年度に雇用者が提供している401(k)プランに加入しており、Aさんは1,500ドル、Bさんは3,000ドルをそれぞれ401(k)プランに拠出しました。

AさんとBさんのタックスリターンの調整後総所得は43,000ドル(拠出額の50%)である場合、貯蓄者タックスクレジット額の計算方法は以下のとおりです。

Aさん

適用となる拠出額:1,500ドル

パーセント:50%

クレジット額:750ドル【1,500ドル x 50%】

Bさん

適用となる拠出額:2,000ドル

パーセント:50%

クレジット額:1,000ドル【2,000ドル x 50%】

よって、合計で1,750ドルの貯蓄者タックスクレジットが、タックスリターンを申請する際に付与されます。

ポイント

夫婦合算の場合、それぞれの拠出額を使い、クレジット額を算出します。

例え #3

貯蓄者クレジットの対象者であるAさんとBさんは、夫婦で共働きをしており、2023年度のタックスリターンでは夫婦合算として申告します。

AさんとBさんは、2023年度に雇用者が提供している401(k)プランに加入しており、それぞれ1,000ドルの拠出を行いました。Aさんは追加で、個人のRoth IRAへ2,000ドルの拠出を行いました。

AさんとBさんのタックスリターンの調整後総所得は60,000ドル(拠出額の10%)である場合、貯蓄者タックスクレジット額の計算方法は以下のとおりです。

Aさん

対象となる拠出額:2,000ドル

パーセント:10%

クレジット額:200ドル【2,000ドル x 10%】

Bさん

対象となる拠出額:1,000ドル

パーセント:10%

クレジット額:100ドル【1,000ドル x 10%】

よって、合計で300ドルの貯蓄者タックスクレジットが、タックスリターンを申請する際に付与されます。

ポイント

米国のリタイアメント口座を複数保有している場合、拠出額を合計してクレジット額を算出します。

まとめ

貯蓄者タックスクレジットは、対象者となる納税者が、特定のリタイアメント口座(Traditional IRAや401(k)など)に拠出し、その納税者の調整後総所得により、拠出額に対してのパーセントが決定され、クレジット額が算出されます。

タックスクレジットは、税額を直接減額するため、還付額の増額もしくは納税額の減額に直接影響します。そのため、よく見落とされがちな貯蓄者タックスクレジット【Saver's Credit】を忘れずにタックスリターンの手続きを行いましょう。

この記事では、複雑な米国の税法やルールをなるべく分かりやすくご理解いただく目的でお伝えしています。納税者の状況により、異なるケースもございますので、予めご了承ください。

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