個人事業主や自営業者のタックスリターンについて
アメリカでは、ギグ・エコノミーやソーシャルメディアの普及により、通常の給与以外にフリーランサーとして報酬を得ている方、アマゾンやBUYMAを通して売上がある方、ユーチューブやソーシャルメディアを通して広告収入・スポンサー収入を得ている方が年々増加しています。
アメリカの個人タックスリターンにおいて、通常の給与以外の労働所得がある納税者は、「Schedule-C」という個人事業主や自営業者用の申告書を使用して、事業の純利益額もしくは純損失額を算出する必要があります。
Schedule-Cによって算出された純利益には、所得税とは別に、15.3%のセルフ・エンプロイメント税【Self-Employment Tax】が課税されますので、タックスリターンの税額が予想以上に高額になるケースが多くあります。ここでは、Schedule-Cについて解説していきます。ご参考になれば幸いです。
ギグ・エコノミーとは、ネットやアプリなどのデジタルプラットフォームを通して、オンデマンドに仕事を請け負い、報酬を得ることです。
ギグ・エコノミーにおいて代表的なプラットフォームとして挙げられるのは、Uberです。
Uberは、世界最大規模の配車サービスを提供している会社で、一般の方がドライバーとして移送を必要としているお客様とリアルタイムにつながり、目的地に移送することで報酬を得るプラットフォームを提供している企業です。
Schedule-Cとは?
Schedule-Cとは、個人事業や自営業の1月1日から12月31日までの収支を記入し、純利益額 【Net Income】または純損失額【Net Loss】の計算をするために使われる申告書のことです。
Schedule-Cは、個人事業主や自営業向けの申告書ですので、事業形態がパートナーシップ【Partnership】、Cコーポレーション【C Corporation】、もしくSコーポレーション【S Corporation】である場合は、Schedule-Cではなく、会社用のタックスリターンを提出します。
よくある質問
Single Member LLCとして活動している場合は、Schedule-Cを申告しますか?
Single Member LLCを設立された場合、一般的にSchedule-Cを使用します。
ただし、設立後に税務上のコーポレーションとして課税することを選択した場合、Schedule-Cではなく、会社用のタックスリターンを申告します。
Form 1099 NECとForm 1099-Kについて
個人事業主や自営業として報酬や売上がある場合、支払者からForm 1099が発行されることがあります。ここでは、個人事業主や自営業者に対して、よく発行されるForm 1099-NECとForm 1099-Kをご紹介いたします。
Form 1099-NECは、支払者(企業など)が非従業員に対して年間600ドル以上の報酬を支払った場合に発行する税務書類で、非従業員への年間支払額が記載されています。
支払者は、翌年の1月末までにForm 1099-NECを該当する非従業員に発行する必要があります。
ポイント
このForm 1099-NECは、IRSにも提出されています。よって、非従業員のタックスリターンにこのForm 1099-NECの報酬額の記載がない場合、IRSから通知書を受け取る可能性がありますので、忘れずに記入しましょう。
Form 1099-Kは、アマゾン・マーケットプレイス【Amazon Marketplace】やスクエアー【Square】などの決算ネットワークを通して売上・報酬を受け取り、以下の2つの条件を満たす個人事業主や自営業者に対して発行される税務書類で、年間取引数と年間売上額が記載されています。
- 1
年間売上額が20,000ドル以上
- 2
年間取引数が200件以上
注意点
2023年1月1日からPayPalやVenmoなどを通しての売上受取額が、600ドル以上のある個人事業主や自営業者に対して、Form 1099-Kの発行が義務付けられました。
しかし、2023年11月21日に、IRSがこの発行義務を延期すること発表。よって、従来どおりの条件を満たす場合にのみ、Form 1099-Kが発行されることとなりました。
Schedule-Cの代表的な経費項目
Schedule-Cの代表的な経費は以下のとおりです。もし、経費として控除できるか定かではない経費項目がある場合は、専門家にご相談することをお勧めいたします。
赤でハイライトしている、「自家用車の経費」と「ホームオフィス」については、特殊な方法で経費額を計算しますので、ご説明いたします。
Schedule-Cにおける自家用車の経費控除額の計算方法は、「Standard Milledge」と「Actual Expenses」があり、一般的に控除額がより高額な方が自家用車の経費として控除できます。
それぞれの計算方法を例えを交えてご紹介いたします。
注意点
税務監査の対象となった場合、Schedule-Cにおける自家用車の「走行マイル」の記録は、必ず提出が求められます。
近年、スマートフォンで走行マイルを記録してくれるアプリがございますので、これらを活用することをお勧めいたします。
ご自宅を使い、事業活動を行っている場合、自宅にかかった費用もホームオフィス【Home Office】として控除できます。
ホームオフィスの計算方法は、ご自宅の全体平方フィートから事業用に利用している平方フィートの割合を算出し、それぞれの年間の自宅費用にかけた額が控除額となります。
ホームオフィスに該当する経費として挙げられるのは以下のとおりです。
セルフ・エンプロイメント税について
Schedule-Cにて純利益がある場合、その純利益に対して15.3%のセルフ・エンプロイメント税【Self-Employment Tax】が課税されます。もしSchedule-Cの純利益が合計$400以下である場合は、その純利益に対してセルフ・エンプロイメント税は課税されません。
米国非居住者 【Nonresident Alien】としてSchedule-Cを申告する場合、セルフ・エンプロイメント税は課税されません。
Self-Employment Taxの計算方法は以下のとおりです。
- 1
Schedule-Cの純利益に対して、92.35%をかける。
- 2
Step 1で算出された額に、15.3%をかける。
例えば、Webサイト制作サービスを提供しているフリーランサーの年間報酬額が12,000ドルであり、年間の合計経費額が2,000ドルである場合、純利益が10,000ドルとなります。このフリーランサーのセルフ・エンプロイメント税の計算は以下のとおりです。
Step 1: 純利益に対して、92.35%をかける。
$10,000 x 92.35% = $9,235
Step 2: Step 1に対して、15.3%をかけます。
$9,235 x 15.3% = $1,412.96
よって、このフリーランサーのセルフ・エンプロイメント税は、1,412.96ドルとなります。
最後に
アメリカの個人タックスリターンにおいて、給与以外の労働所得を得ている納税者は、Schedule-Cに事業の年間収支を記入し、他のタックスリターンと併せて提出する必要があります。
特に注目していただきたいのは、Schedule-Cによって算出された純利益に対して、所得税とは別に15.3%のセルフ・エンプロイメント税が課税される点です。
この記事では、複雑な米国の税法やルールをなるべく分かりやすくご理解いただく目的でお伝えしています。納税者の状況により、異なるケースもございますので、予めご了承ください。
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